自動車産業の位置づけ

2014年に経済産業省が取りまとめた「自動車産業戦略2014」では、「我が国経済において、自動車産業はリーディング産業である。高い国際競争力を有し、貿易黒字の約5割を占める外貨の稼ぎ頭でもある。国内においては、広大な裾野産業と雇用を抱え、地域経済を支えている」と表現し、日本経済において自動車産業は重要な地位を占めています。

自動車産業の主な位置づけ

製造品出荷額(2014年) 約53兆円(全製造業の17.5%)
自動車関連就業人口 約534万人(8.3%)
産業別研究費(2015年度) 約2兆8,000億円(全製造業の約23.9%)
設備投資額(2016年度計画額) 約1兆5,000億円(全製造業の約22.3%)
輸出額(2016年) 約15兆1,000億円(輸出総額の約21.6%) 2015年度

【出所】一般社団法人「日本自動車工業会」

自動車産業の動向

販売・生産台数推移

2016年の国内生産台数は約920万台と1990年(1,349万台)をピークに下落傾向が続いています。国内販売台数も約497万台と1990年(約777万台)をピークに、若者の車離れ、少子化、高齢化などの影響で下落傾向にあります。輸出台数も伸び悩んでいる一方、日本メーカーの海外生産台数は1985年のプラザ合意以降、ほぼ右肩上がりで増加しており、1,748万台(2014年)→1,809万台(2015年)→1,897万台(2016年)と、現地生産が進んでいます。2016年には海外生産比率は約67%となり、国内メーカーの自動車の3台に2台が海外生産によるものとなっています。

(単位:台)

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
国内生産台数 9,943,077 9,630,181 9,774,665 9,278,321 9,204,696
国内販売台数 5,369,720 5,375,513 5,562,888 5,046,510 4,970,258
輸出台数 4,803,591 4,674,633 4,465,624 4,578,078 4,634,097
日本メーカーの海外生産台数 15,823,648 16,756,754 17,476,267 18,094,876 18,979,470

【出典】一般社団法人「日本自動車工業会」等

M&Aの動向

2016年の全国社長の平均年齢は61.19歳。年齢分布は60歳代が33.99%と最も高く、70歳代以上が24.12%と60歳以上は全体の58%となっており、団塊世代の社長交代が進まず、高齢化が顕著になっています。産業別の平均年齢では、不動産業の63.01歳、次いで卸売業62.56歳、製造業と小売業が62.24歳と続いています。

【表1】社長の平均年齢推移

(単位:歳)

2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
60.03 60.24 60.43 60.62 60.89 61.19

【表2】社長の年齢分布

2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
30代以下 4.40% 4.21% 4.03% 3.77% 3.46%
40代 14.85% 15.24% 15.47% 15.48% 15.87%
50代 23.73% 23.12% 22.86% 22.88% 22.56%
60代 36.98% 36.41% 35.85% 35.06% 34.57%
70代以上 19.38% 20.61% 21.59% 22.58% 23.30%

【表3】産業別 社長の平均年齢

産業 平均年齢
不動産業 63.01
卸売業 62.56
製造業 62.24
小売業 62.24
農・林・漁・鉱業 61.39
サービス業他 60.95
運輸業 60.76
建設 60.09
金融・保険業 60.03
情報通信業 56.50

【出所】(株)東京商工リサーチ

上記のような経営者の高齢化は、完成車メーカーにとって自動車部品の安定調達上、大きな問題となっています。今後完成車メーカーや大手自動車部品メーカー(Tier1・Tier2)が主体となって、部品の安定調達や製造技術の承継を目的とした中小企業のM&Aが活発化することが予想されます。

注目を集める次世代自動車

背景

平成20年7月の北海道洞爺湖サミット後、化石エネルギーに依存した現在社会から脱却し、「低炭素社会づくり」を進める行動計画を閣議決定しました。低炭素社会を目指し、長期目標を実現するために重要な革新的技術開発の推進及び既存先進技術の普及促進を行うこととし、既存先進技術の普及の一つに「次世代自動車※の導入」が記載されました。
※次世代自動車=ハイブリッド自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車、クリーンディーゼル車、CNG自動車等)

その後平成25年6月に閣議決定された日本再興戦略では、2030年までに新車販売に占める次世代自動車の割合を5~7割とする目標を掲げ、平成26年4月に閣議設定されたエネルギー基本計画では2015年内に100か所程度の水素ステーションを整備する目標を掲げました。平成28年6月に閣議決定された日本再興戦略2016では、2020年までに保有台数ベースで、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車は最大100万台、燃料電池自動車は4万台程度を目指すとしています。

自動車の構造を巡る今後の変化

【次世代自動車】

燃料電池自動車 車載の水素と空気中の酸素を反応させて、燃料電池で発電し、その電気でモーターを回転させて走る自動車
電気自動車 バッテリー(蓄電池)に蓄えた電気でモーターを回転させて走る自動車
ハイブリッド自動車 複数の動力源を組み合わせ、それぞれの利点を活かして駆動することにより、低燃費と低排出を実現する自動車
プラグインハイブリッド自動車 ハイブリッド自動車に対し、家庭用電源などの電気を車両側のバッテリーに充電することで、電気自動車としての走行割合を増加させることができる自動車
クリーンディーゼル自動車 平成21年10月に導入された「ポスト新長期規制」と呼ばれる排出ガス基準に対応したディーゼル自動車
CGN(天然ガス)自動車 家庭に供給されている都市ガスの原料でもある天然ガスを燃料として走る自動車

【出所】次世代自動車ガイドブック2016-2017

自動走行技術

自動運転レベルの定義

【出所】官民ITS構想ロードマップ2017

自動走行の課題

技術開発の進む自動走行技術ですが、広く一般に普及するには様々な課題を抱えています。事故時の損害賠償責任や車両整備責任、運転免許制度の在り方等の法整備の問題だけでなく、自動走行技術に欠かせない「コネクテッドカー」のハッキングリスク等。普及にはこれからの課題を解決していなかなければなりませんが、自動車メーカーやIT企業等の様々な企業が自動走行技術の開発に注力しており、近い将来自動走行システムを搭載した自動車に搭乗する日が来ると思われます。

自動車産業の代表的なM&A事例

事例1

譲渡企業A社
切削・研磨・バリ取り加工
東海
後継者難
譲受企業B社
建材製造・販売
北陸
自動車分野への進出

A社はティア1の後工程を担う年商約50億円の自動車部品加工企業。設備・人材・ノウハウを武器にサプライチェーンにおいて存在感を示しており、価格交渉力も強い優良企業であった。社長は64歳であったが、30代の息子が常務として勤務。
しかし今後の成長発展を考え、常務への承継ではなくM&Aを決断した。

一方譲受企業であるB社は、中核事業である建材部門が好調であったが、非建材部門のマテリアル事業の強化が、
グループ全体の成長戦略に必要だと考えていた。

今回のM&Aで、A社はB社の営業ノウハウや商品開発力を獲得し、B社は自動車業界のサプライチェーンの一翼を担う存在となり、新たな中核事業を獲得した。

事例2

譲渡企業C社
プレス製品製造
愛知
後継者難
譲受企業D社
自動車部品製造業
中部地方
愛知県への進出、顧客口座の獲得

C社は、多数の優良顧客から主に特注品の加工を請け負う、売上約9億円の企業。二代目である社長は堅実に舵をとり、安定した収益力を武器に無借金にて経営。しかし子供はおらず、持病もあり70歳を機にM&Aを決断。

一方譲受企業であるD社は、愛知県外を基盤に地力を持つ優良金属加工企業として、次の展開として愛知県を睨み、力を蓄えながら機を待っていた。

今回のM&AでC社は、D者の強力な資金力を担保に設備投資を行うことで生産体制を強化し、D社は新規の優良顧客を効率的に獲得した。

事例3

譲渡企業E社
切削・溶接・研磨
愛知
後継者難
譲受企業F社
金属精密加工
中部
愛知県への進出

E社は、従業員数名、売上高1億円強ながら、小回りを利かし特注品や試作品の製造・組み付けを行う技術屋として、取引先から高い評価を受けていた。しかしそれ故従業員にマネジメント人材がおらず、後継者となりうる子供もいなかったため、M&Aによる譲渡を決断。

譲受企業F社であるは、最新設備を用いた精密な塑性加工と、徹底的な生産管理によって愛知県の顧客獲得も順調に進んでいたが、本社工場から距離があり、顧客対応力を高めるために技術力のある企業の譲受を希望していた。

今回のM&AでE社は、社長の代わりに顧客対応や従業員の舵取りができる人材と、現代的なノウハウを得、F社は愛知県の優良顧客に対するキメ細やかなサービスを提供する手段を得た。

事例4

譲渡企業G社
金型製造、樹脂成形、塗装・プリント
日本法人の中国子会社
子会社切り離し
譲受企業H社
樹脂成形
日本法人と中国法人の合弁企業
不動産取得

譲渡企業Gは、日本法人の中国子会社として土地使用権を持ち、自動車部品の金型や、大小様々な射出成形を行う企業。
しかし経営状況は芳しくなく、日本からの資金援助も限界に来ており、切り離しを希望。

一方の譲受企業H社は、日本企業と現地企業の合弁会社で、レンタル向上にて大型の射出成形を行っていたが、不動産取得を希望していた。

譲渡企業G社、ひいてはその親会社は、中国からの撤退が完了したことで国内事業への経営資源の集中が叶い、譲受企業H社は、安定的に事業を行うための重要な基盤である土地使用権を得た。