アドバイザーの手帳

事業承継:製造業

「希少技術を持った優良企業」A社の場合

70歳代の社長から、 「後継者がいない」という相談があった。
社員のなかに継いでくれる適当な人がいない。子息もいないということで後継者を探す。
狭い業界で、同じ仕事をしているのは全国で20社ほど。建築関係で空調に関連した製品を設置する会社である。
ライバル会社がいないので、仕事は引く手あまたで業績は良い。社員10人位の会社だが、業界では中堅の部類。
同じ業界ではなく、別の業種の方に引き継いでもらいたい」と社長からのオーダー。

シナジーが出るようなところはどういうところか模索。探索。調査。
異業種でビルの骨組みを作る会社をご提案する。同じ業界でもやっていることはまったく違う。
まず業界の知識を仕入れる。分からないことを無くすため、徹底的に勉強する。そして売り主様の仕事を机上だけでなく、実際に見て、触れて、知ることが大事だ。業界の現状を考えると私はこう思う、ということを提案する力が問われる。
ただ会社をくっつけるだけではない。
モノを超えた経営者の理念であったり、事業への思いであったり。それは渡す方も受ける方も同じように持っている。
だから、「モノではなくコトを売る」のだと思っている。
買い手の企業からも興味をもっていただけ、経営理念も共有できた。事業拡大につながることもあり成約となる。
マッチングの決め手はシナジー効果と、何と言っても双方の経営者のお人柄に尽きる。
買い手様からは「この人の後継になりたい」という言葉をいただいた。
お渡しする方からは「この人だったら安心。みんな任せられる」と。
お互いの人柄がマッチした瞬間だ。

交渉中は、利害が対立することはごく普通である。
売り主様からみれば「人生最後の仕事」となるのだから、譲れないことも多い。
双方の経営者と私の3人、成約が整ったところで周囲を見渡し、これからが「新しいスタートライン」であることを確認する。
終わりよければすべてよし。その瞬間がたまらない。
常に思うことは、M&Aにおいて何が重要かということは、経験していくうちに研ぎ澄まされていくということだ。
いつも良いマッチングになるとは限らないが、得てして経営トップ同士の理念が合うとスムーズに決まることが多い。アドバイザーとは、人の思いをつなげるために仕事をしているのだと実感するときである。