Interview
M&A支援
同業種でのM&A
地域医療の灯を絶やさない。
新しい医院承継のかたち
三重県で35年にわたり、地域に根差した診療を続けてきた岩田歯科医院。岩田様は後継者問題と自身の年齢を見据え、医院承継を決断されました。そこに手を挙げたのが、愛知・東京を中心に複数の医院を展開する医療法人 清翔会です。地域医療を守る挑戦について、岩田様と清翔会 理事の小池様にお話を伺いました。

医院承継でつないだ、
患者様と地域の未来
岩田先生、現在の心境はいかがですか。
岩田氏:医院承継は2025年1月に成立して、以降は、経営からは退いたものの管理者として医院に残って診療を続けておりましたが、2026年3月で後任に引き継ぎ、現場を離れました。患者さんたちにも惜しんでいただき、これまで続けてきて本当に良かったと思います。清翔会による承継のおかげで、スタッフの雇用も患者さんへの変わらぬ医療提供も守ることができ、ホッとしています。
医院承継をお考えになった経緯をお聞かせください。
岩田氏:息子も歯科医師ですので、当初は彼への承継を考えていました。ただ、息子は矯正専門医の道を選んだため、現在の医院を一般歯科医院として受け継ぐ形は難しいと感じていました。さらに「あと5年は開業せず経験を積みたい」という意向もありましたので、自分の年齢を鑑みて、第三者への承継を考えるようになりました。
承継完了までの道のりは?
岩田氏:開業当初より顧問税理士としてお世話になっていた税理士法人名南経営の担当者に相談する中で、第三者承継という選択肢を現実的に意識するようになり、グループである名南M&Aを紹介してもらいました。名南M&Aのアドバイザーとの面談を通じて理解を深め、名南M&Aが出版した承継事例をまとめた書籍にも目を通す中で、岩田歯科医院に長年通ってくださっている患者さんや地域医療を守るうえでも、有効な選択肢ではないかと考えるようになりました。2023年10月にアドバイザリー契約を締結し、承継先探しをスタート。約半年後に清翔会への承継が決まり、スタッフへの開示や法的・事務的な手続きを経て、2025年1月に医院承継を実現しました。
清翔会に託す決断をされた決め手は、どんな点だったのでしょうか。
岩田氏:承継先候補として最初に手を挙げてくれたのが清翔会でした。小池さんも理事長も、熱心に誠実に向き合ってくれましたし、スタッフも現況のまま引き継いでいただけるということで、安心して託せる医療法人だと思いました。
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2年間の並走という、
新しい承継モデル
清翔会として、今回のお話をどう受け止められましたか。
小池氏:三重県は、私たちにとって未進出エリアでした。名南M&Aから岩田歯科医院を紹介いただいた際、最初は地図を見ながら「このエリアで私たちが診療を継続していけるのだろうか」と考えたのも正直なところです。ただ、実際に岩田先生ご夫妻にお会いして、そのお人柄に強く惹かれました。「この先生の想いを何とか形にしたい」と思ったんです。 一方で課題は明確でした。すぐに後任ドクターを配置できなければ、承継は成立しません。拠点がない地域では採用も簡単ではなく、その壁をどう越えるかが私たちにとって最大のテーマでした。
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その課題に対して、清翔会が提案したのが「2年間の並走期間」だったそうですね。
小池氏:一般的には、承継が決まったらすぐ引退したい先生が多いと思います。ただ今回は、もし岩田先生に2年間管理者として残っていただけるなら、その間に私たちが全力で後任を探す、という形をご提案しました。地域医療を途絶えさせないための、新しい承継モデルへの挑戦です。
岩田氏:承継をすることで、当院で経理や給与計算を担当していた妻の負担を早く軽くしてあげたい気持ちはありました。ただ、自分自身はまだ健康でしたし、地域医療を守れるなら協力しようと思いました。
結果として、奥様の担われていた経理業務などの「経営」の部分は清翔会に承継され、岩田先生は診療に専念しながら、後任探しを見守る体制が整いました。後任の歯科医師を見つけるまでに、どのくらいの期間を要したのでしょうか。
小池氏:実は、岩田先生とお会いした頃から声をかけていた先生がいたんです。一度は距離の問題で難しくなったのですが、住居面の工夫なども含めて再提案し、前向きに検討していただけました。結果、当初の予定をはるかに上回るスピードで、1年後には管理者の交代が実現しました。2025年1月の成約から今日まで、理想的なペースでバトンを繋ぐことができています。
岩田先生が、私たちからの「2年間という猶予の中で次世代を育てる」という提案を信頼してくださり、共に歩む決断をしていただいたことが全ての起点です。私たち清翔会が最も大切にしている、「先生の思いを守る」という姿勢が、岩田先生が長年守ってこられた患者様やスタッフへの想いと共鳴し、いい関係を築きながら歩むことができました。
岩田氏:後任の柴田先生は、患者さんから「息子さんですか?」と聞かれるくらい、私に雰囲気が似ているんですよ。相性も良く、安心して任すことができました。
行政手続きという見えない壁も、
伴走支援で前進
今回のM&A支援において、名南M&Aのアドバイザーはいかがでしたか?
岩田氏:実は、行政手続きのうえで、ひとつ大きなハードルが立ちはだかったんです。医院が市街化調整区域内にあり、事業譲渡にあたって建物の用途変更を申請する必要があったのですが、雨水配管の直径や勾配などが、現在の申請基準を満たしていない可能性があることが判明しました。結果問題はなかったのですが、その調査も含めて清翔会への名義変更手続きの認可に時間がかかり、結果として予定より2カ月延長になりました。その際、名南M&Aのアドバイザーが三重県の行政窓口に行って確認事項などを私に報告してくれたりと、ずいぶん骨を折ってくれました。当事者だけでは、何から調べればいいか分からなくなる場面もあります。間に入って状況を整理していただき、本当に助かりました。
名南アドバイザー:譲渡・譲受の意思は固まっていても、行政上の手続き等でM&Aの進行が止まってしまうことがあります。今回は行政書士や関係者と連携し、何度も確認しながら一つずつ進めました。
小池氏:名南アドバイザーとは成約まで足かけ4年ほどやり取りをしてきましたが、いつも迅速に、誠実な対応で信頼がおけました。また、「後任不在」というリスクに対して、私たちの変則的な提案を岩田先生に的確に伝え、合意形成をサポートしてくれました。成約後も、法的手続きや事務的な切り替えにおいて、現場に負担がかからないよう配慮してくれましたし、私たちが掲げた「仕組みもやり方も、敢えて変えない」という慎重な引き継ぎ方針を理解し、陰ながら支えてくれる心強いパートナーでした。
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個人の医院から医療法人へ。
地域医療に永続性を
現在、岩田先生は院長職を退き、週3日で訪問歯科医として新たな働き方をスタートしているそうですね。
岩田氏:責任から離れて精神的には楽になりました。今は小池さんが提案してくれた訪問歯科にも挑戦しながら、旅行や歴史の勉強など、自分の時間も楽しみたいと思っています。
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清翔会が医院を譲り受ける際、心配なことはありましたか。
小池氏:最大の懸念は、運営母体が変わることでスタッフが不安感を抱くことでした。そのため、この1年間は、法人は清翔会に変わりましたが、中の仕組みやルールは「敢えて全く変えない」という徹底した方針を貫きました。現場の混乱と反発を防ぎたかったので、まずは信頼関係を築くことを最優先し、変わらない安心感を提供することに注力しました。
岩田先生、医院承継(譲渡)を検討中の医師の方へのアドバイスはありますか。
岩田氏:医院承継をしてわかったことは、開業する時よりも、承継を含めて医院を閉じる時の方が難しく大変だということです。承継を検討中であれば、ご自身に余裕があるうちに決断することが、良い結果につながると思います。
清翔会として、医療機関の譲り受けを検討中の法人に向けたアドバイスをお願いします。
小池氏:医院承継を成功させる秘訣は、焦って「色」を塗り替えないことだと思います。特に最初の1年は、これまでの文化を尊重し、変化を最小限に留めること。スタッフの安心があって初めて、次のステップに進めます。また、拠点がないエリアでも、時間を味方につける提案(管理者継続の依頼など)ができれば、可能性は大きく広がります。信頼できる医院承継アドバイザーと共に、数字やスピードだけでない、「人」と主軸に据えた承継を目指していただきたいです。
私たち清翔会は、日本一の歯科グループを目指しています。売上だけでなく、患者様満足、社員満足、報酬水準、治療レベルなど、いろんな意味で日本一を目指したいと考えています。そのためにも、これからも「想いを形にする」承継を続けていきます。
“引退か継続か”ではなく、“新しい人生への移行”もまた、承継の価値の一つなのかもしれません。真摯に、必要なコミュニケーションのために言葉を尽くす。お互いの未来のために前を向く姿勢がお二人から伝わってくるインタビューでした。
