Interview
IPO支援
TOKYO PRO Market 上場支援
上場は信頼の証、
社員にもお客様にも誠実な企業でありたい。
2025年9月11日、中古車の買い取りを主な事業とする株式会社コヤマ・ミライエが東証のプロ投資家向け株式市場「東京プロマーケット(TPM)」に上場しました。名南M&Aは、TPMへの上場審査業務を担うJ-Adviserとして上場を支援。コヤマ・ミライエの代表取締役CEOである小山 武氏に、上場までの道のりや現在の心境についてお話を伺いました。

中古車買い取りに特化した
ビジネスモデルを強みに
貴社の事業についてお聞かせください。
小山氏:当社は「中古車の買い取りに特化した新しいスタイルの会社」です。2003年に創業し、現在は静岡県内に12店舗と法人営業部2拠点を展開、年間約1万台の査定を行っています。中古車の販売や整備に手を広げず、少人数・予約制により効率を徹底することで、お客様への「正確な査定と高い提示価格」を実現してきました。
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「買い取りに特化する」という戦略から、小山社長のビジネスセンスと覚悟が伝わってきます。
小山氏:車を売りたいお客様への一番の価値提供は、愛車を高く買い取ることだと思っています。私たちは買い取った車の再販店舗や整備専用の設備を持たない代わりに、その差益をお客様に還元しよう、と効率重視でここまで歩んできました。ビジネスモデルをシンプルにしたのは、社員の心理的負担の軽減も図りたいという想いもありました。当社は、「社員とともに成長し、日本全国のカーオーナーに『KOYAMAの価格を知る文化』を提供し、愛車を安心して売却できる新たなスタンダードを確立する」という理念のもと、正確で誠実な査定とスピーディーな買い取りを徹底しています。
買い取った車は、どういった流通経路へ?
小山氏:当社はお客様の愛車を買い取ったら、すぐに自動車オークションへ出品します。スピード感を持ってどんどんオークションに出していくので、在庫リスクは低いですし、少ないキャッシュで回していくことが可能となるためキャッシュフローも良好です。ただ、お客様から高く愛車を買い取るため一般的な中古車ビジネスに比べると利益率は高くありません。このビジネスモデルを持続可能なものとするため、市場動向に敏感に、かつ査定情報の精査については絶えず研究を重ねています。
上場というステージへ、
仲間がいたからこそ拓けた道
東京プロマーケットへの上場の狙いをお聞かせいただけますか。
小山氏:2003年の創業から事業を拡大していく中で、志を共にする仲間が増えていきました。店舗が6、7店舗と増えるにつれ、管理体制の整備の必要性を感じて組織化を検討し始めたのが新型コロナ末期の頃です。取引先である清水銀行の紹介で名南グループである名南経営コンサルティングと出会い、管理体制の整備と社員の未来を描くためのロードマップづくりの相談を始めました。当初はまだ上場ということは念頭にありませんでしたが、名南M&AがJ-Adviserの資格を取得して新規分野へと乗り出すタイミングだったこと、中古車業界の信頼を揺るがす社会問題から私たちもコンプライアンスやガバナンスについての勉強を始めていたことなど、縁とタイミングが重なり名南M&Aの担当者と繋がりました。
車という動産を預かる商売柄、私たちはお客様の個人情報をたくさん聞かせてもらいます。一方で私たち自身が情報を開示していないのは不公平なのでは、と以前から感じていたこともあり、愛車を売ってくださるお客様への安心材料として、また当社の社会的責任として上場をめざす流れとなりました。私たちの会社運営に関する姿勢をお客様に知っていただく、という意味でも上場というのは、良い表現方法だと思ったのです。
上場先としては、スピードと実効性を重視して東京プロマーケットを選択。まずは東京プロマーケットで当社のガバナンスや開示を磨いて成長の土台を築き、段階的に次の市場へ挑むと決めました。東京プロマーケット上場はゴールではなく、信頼を得てさらなる挑戦へ向かう出発点だと考えています。
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お客様に安心していただくための信頼の証となる、というお考えで上場という道を選ばれたのですね。J-Adviserとして名南M&Aはいかがでしたか?
小山氏:形式的なアドバイスだけでなく、現場を理解して実装まで伴走してくれた名南M&Aのアドバイザーは、中堅企業を一段上の水準に引き上げてくれる力を持つ本物のパートナーだと思いました。
アドバイザー:ゼロからのスタートでしたので、さまざまな整備をするなかで大変なことも多かったと思いますが、小山社長はじめ、コヤマ・ミライエの社員の皆さまは、当初から事業拡大と意欲に満ちていました。
小山氏:最初に予備調査としてショートレビューを受けた時、200項目以上のチェック項目がすべて「×」だったんですよね。あのときは正直「無理だ…」と思いましたよ。
アドバイザー:受託前のヒアリングの場でのことですね。そこから奮起して上場を果たしたのですから、IPO管理部門のご担当者を含めて本当に頑張られたと思います。
客観的な指標の導入が
自己流経営からの脱却の好機に
名南M&A以外の選択肢も検討されたのですか?
小山氏:それまで名南グループの名南経営コンサルティングの担当者と、当社の管理体制の整備を進めていたこともあり、上場するならJ-Adviser は名南M&Aに任せようと決めていました。それまでのやりとりから、名南グループの企業姿勢には‘ハート’があると感じていましたから。税理士法人が母体で様々な士業法人もグループに属しているということもあり、今回の目的達成に必要なすべての機能が名南グループには備わっていましたので、安心して任せることができました。
上場には東証が定める基準を満たす必要があります。当社の管理体制を整備するなかで「車の査定・買い取りなどの業務フローを一新する必要がある」という課題に直面したのですが、名南アドバイザーのおかげで査定から契約までの業務フローを短期間で仕組み化することができました。数字の正確性はもちろんのこと、「買い取り特化モデル」の価値を伝える開示資料へと磨きあげてくれたのもありがたかったです。システム導入により「見える化」が叶いましたし、社内にも「やりきる文化」が根付いたのは大きな財産となりました。
東京プロマーケットへの上場プロセスにおいて、一番苦労したことは?
小山氏:少人数でのスピード経営と内部統制の両立です。効率を損なわずに、規定や証憑管理を仕組みに落とし込むことに最も苦心しました。そこを乗り越えたことで会社の基盤は格段に強くなりました。
ひとつひとつの課題にじっくりと取り組み、改善を積み重ねた先に結果があります。東証が示す上場基準というのは、数多の会社の成功と失敗を精査した膨大なデータをもとに設けられていますから、その基準をクリアすれば倒産するリスクは減ると思いますし、社会からの信用につながるのですから、この常識に合わせていくしかない。私にとっても、これまでの自己流での経営からの脱却をはかる好機となりました。
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上場は信頼の基盤づくり、
経営者の覚悟が企業の成長に
上場後、小山社長が感じている変化はありますか?
小山氏:ひとことで言うと、気持ちがとても楽になりました。「ラク」と表現しましたが、その意図をお伝えしますと、中小企業オーナーの「マイルール」から「東証の設定ルール」に代わるということです。経営にまつわるすべてのことを可視化して、オープンな経営ができるようになること。オーナーがひとりですべてを抱え込むのではなく、仲間に託せるところは託して、皆で未来へと進んでいくイメージです。これは中小企業が上場する最大のメリットではないかと私は今回の経験を通じて感じました。将来的に会社承継の局面においても道筋を立てやすくなると思います。
アドバイザー:あらゆる局面において小山社長の決断は迅速でしたし、「楽になる」という表現について補足させていただくと、結局上場とは「仕組み化」ですから、「不正が起こり得ないようリスクは軽減しましょう」ということなのです。仕組みが確立された今、経営の透明性が担保されたことで、これまで社長が一身に背負われていた肩の荷を少し降ろせたということでしょうね。
コヤマ・ミライエの今後の展望については?
小山氏:静岡で直営基盤を固め、全国へフランチャイズ展開をしたいと考えています。AI査定を導入し、全国どこでも同じ水準でコヤマ・ミライエの価格を提示できる体制を作り、全国のカーオーナーに中古車市場における「新しい常識」を届けていきます。まずは四国・九州と少し離れた場所での展開を想定していて、徐々に東へと広げていきたいです。
小山社長が言う「新しい常識」とは?
小山氏:「車の買い取りに特化したコヤマ・ミライエの提示価格を知っていただくこと」です。口コミや比較文化のなかで「コヤマ・ミライエの価格」を全国のお役様に届けたいですね。
東京プロマーケットを足掛かりに、いずれはグロース、スタンダード、とステップアップをめざします。中古車市場における価格は日々変動しますから、「コヤマ・ミライエ価格」としては常にギリギリの価格をお客様に提示したいと考えています。そのためにAI査定システムの導入やフランチャイズ間で共有できるシステムの構築を検討しているところです。
これから東京プロマーケット上場を目指す企業にアドバイスをお願いします。
小山氏:仕組みづくりは早く、広く、そして柔軟に。上場は資金調達目的ではなく「信頼の基盤づくり」と捉えることです。その信頼こそが会社の成長を加速させます。「覚悟を決めて踏み出すこと」、それがすべての始まりだと私は思います。
小山社長の場合は、業績拡大に伴い組織を見直すなかでさまざまな出会いがあり、その流れで「上場」という選択肢を知りそのチャンスをつかんだ、とお話を聴いていて感じたのですが、覚悟を決めたタイミングはどのあたりだったのでしょうか。
小山氏:やはりショートレビューの結果を見た時ですね。そのときに直面した課題は、これまでのやり方を否定するところから始めなくてはいけませんでしたので。そこを乗り越えれば新たな景色が見られるのでは、と考えを改め、会社を次のステージに進める覚悟ができました。
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