Interview
M&A支援
同業種でのM&A
「継ぐ」か「託す」か。
視点を変えた、成長のかたち
業界の環境変化、後継者不在、そして将来への不安。株式会社エム・エム テクニカル産業の森様が直面していたのは、多くの中小製造業が抱える構造的な課題でした。株式会社HIRANO METAL WORKSとの出会いを経て、新たな一歩を踏み出した森様と平野社長に、意思決定の背景や現在の状況についてお話を伺いました。

事業環境の変化と、
経営者としての決断
現在は譲渡先で工場長を務める森様ですが、M&Aでの第三者承継の検討を始めたきっかけについてお聞かせいただけますか。
森氏:エム・エム テクニカル産業は、売上の約9割が自動車関連です。自動車部品のプレス加工と金型製造を手がけていますが、部品加工は利益率が低く、赤字が常態化していました。金型製造に軸足をシフトしようと試みた時期もありましたが、コロナ後に需要が止まり、現在に至ります。
さらにEV化や海外競争の激化などの要因から、「このままでは先を見通せない」と感じるようになりました。 加えて、大きかったのが後継者の問題です。私が還暦を迎えた頃から社内承継も検討しましたが、財務的な負担を考えると現実的ではなく、経営を続ける選択肢そのものが限られていました。不安を独りで抱えていたタイミングで、銀行から提案をいただいたのがM&Aという考え方でした。
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M&Aに対する受け止め方や迷いは、どのように変化していったのでしょうか?
森氏:正直に言うと、「自分でまだやれるのではないか」という気持ちもありましたし、「会社が人の手に渡る」という感覚にも抵抗はありました。ただ、話が進むにつれて「会社として何を優先すべきか」を考えるようになったんです。従業員や取引先のことを考えると、事業を継続すること自体が価値であり責任だと。そう考えたときに、M&Aは“手放す”のではなく、“力を借りて次のステージに進む”ことだと捉えられるようになりました。
出会いが導いた、
未来へと続く決断
HIRANO METAL WORKSの平野社長との出会いについては、いかがでしたか。
森氏:譲渡先を探してみよう、と考え始めた当初は「本当に引き受けてくれる会社があるのか」という不安がありました。実際、当社はかなり厳しい状況でしたから。ただ、平野社長とお会いして印象が大きく変わりました。初めて会ったときから波長が合うというか、ものづくりへの情熱が伝わってきて、「一緒にやっていける」と自然に感じられたんです。何より、平野社長にエネルギッシュな勢いを感じました。
平野社長は、戦略的にM&Aを志向されていたのでしょうか。
平野氏:私自身、最初からM&Aありきという戦略があったわけではありません。
もともと当社のリスクマネジメント、BCP(事業継続計画)対策で新拠点を探していました。当時、銀行にホールディングス化を相談していたこともあって、その中でM&Aの提案をいただいたんです。銀行が紹介してくれた名南M&Aから、マッチング先としてエム・エム テクニカル産業を紹介してもらいました。当社にとってBCP対策になりそうな立地だということに加えて、当社にない設備や技術に興味が湧き、トップ面談をしてみようと思いました。車で30分ほどで往来できる場所だったことにも縁を感じました。
HIRANO METAL WORKSの主力事業は工作機械の部品製造で、エム・エム テクニカル産業の顧客とは業界的にも全く被りません。両社ともに共通しているのは、「金属の部品を作っている」ことだけでした。技術も、工程も、使う機械もすべてが違う。だからこそ、それぞれの技術を掛け合わせたら、新しいことができるんじゃないかと可能性を感じました。
名南アドバイザー:初めてのトップ面談時から、お二人の雰囲気が良かったことが印象に残っています。
森氏:平野社長は課題や不安点に目を向けるだけでなく、「この会社がもっと良くなるにはどうすれば良いか」「グループ企業として一緒になることで、どんな可能性が広がるか」を前向きに考えてくださったのが印象的でした。その姿勢に、心からありがたさを感じました。
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統合後に芽生えた
新たな絆
今回のM&A支援において、名南M&Aのアドバイザーはいかがでしたか?
森氏:最初から結論を急がせるのではなく、じっくり考える時間をもらえたことが良かったです。気持ちが整理できるまで待ってもらえたことで、納得して進めることができました。
平野氏:「とりあえず会って話してみよう」という気持ちで、構えずにトップ面談にのぞめたのが良かったです。初めてのM&Aで不安もありましたが、質問に対する回答が早く、意図を汲んだアドバイスをいただけた点は非常に助かりました。無理に押し進めるような姿勢ではなかったので、安心して検討できました。
名南アドバイザー:名南M&Aの方針として、お客様の意思を尊重することを大切にしています。案件によってはスピードが重要な場合もありますが、今回はしっかりと時間をかけるべきケースだと判断しました。
両社統合後、現場にはどのような変化がありましたか?
平野氏:余談ですが昨日、両社の社員が参加する合同運動会をやったんですよ。地元のドームを会場に、「HIRANOフェスティバル」と冠したスポーツイベントです。綱引きに大縄跳び、最後は全員参加のリレーなど、4つのチームに分かれて本気で競い合いました。エム・エム テクニカル産業の社員も全員参加してくれました。
森氏:あれは良かった。両社の社員同士の交流にもなり、刺激をたくさんもらいました特に平野社長の前向きな姿勢と牽引力は、自然と周囲を巻き込み、社員の一体感を高めていたように思います。イベント後には、早くも次回を見据えた前向きな声が現場から聞こえてきたくらいです。
平野氏:「森工場長のために頑張るぞ!」という、エム・エム テクニカル産業の社員たちの気持ちが伝わってきました。団結力のある、とてもいいチームと一緒になったんだ、と私も実感しました。
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社員の方々にとっても、不安を払拭する機会になったのですね。
森氏:経営統合のことを社員に伝えたのは、M&A成約当日の3月11日でしたから、いきなり親会社ができた、という驚きが彼らにはあったでしょうね。
平野氏:私からも「これまで通りの仕事を続けていただきます」とお伝えしましたが、突然M&Aにより、不安を感じた社員の方も少なからずいたと思います。
そうした中で、両社一堂に会した運動会は、お互いの心理的な距離を縮める機会になったのでは、と感じています。
M&Aは、選択肢ではなく
「可能性」
HIRANO METAL WORKSにとって新拠点ができたわけですが、BCP対策で機械の移動なども、これから検討していくのでしょうか。
平野氏:現時点では既存設備を移設するというよりも、補助金を活用した設備導入などを検討しています。新拠点に新設することで、移動コストを抑えつつBCP対策にもつなげられると考えています。また、想定していなかった点として、県ごとに異なる制度や支援策があることも大きな気づきでした。三重県と岐阜県、それぞれの制度を活かしながら事業展開を考えられることで、拠点の分の可能性も広げられそうです。
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譲渡側、譲受側、それぞれの今のお気持ちをお聞かせいただけますか。
森氏:一番大きいのは「視野が広がった」ことです。これまでは自社の中で完結していましたが、新しい環境や価値観に触れることで、可能性を感じるようになりました。また、財務面でも精神的な負担が軽減されました。その意味では“身軽になった”と感じています。
平野氏:設備や技術の違いはありますが、それを掛け合わせることで新しい価値が生まれる可能性があります。まだ具体的な形は見えていませんが、そこに面白さを感じています。
これからM&Aを検討する経営者へアドバイスをお願いします。
森氏:後継者がいないと投資も難しくなり、対策が限定的になりがちです。そうなる前に、M&Aを選択肢として考えることはとても重要だと、今回の経験を通して知りました。
平野氏:後継者がいるかどうかに関係なく、「会社をどう成長させるか」を考えることが大事だと思います。M&Aであっても、より良い形で次につなぐことができます。
そして何より、「やらずに後悔するより、やって後悔したい」と私は考えていますので、一歩踏み出すことが、新しい可能性を広げるきっかけになるのではないでしょうか。
M&Aは「売却」「買収」という言葉がひとり歩きしがちですが、「企業の未来をどうつなぐか」という、経営者の意思決定だと改めて感じました。迷い、葛藤しながらも一歩踏み出した先にあったのは、「新たな始まり」でした。
