Interview
同業種でのM&A
同業種のM&Aで、
シナジー効果を生み出す
後継者不在で検討を始めたM&Aという選択肢。天仁株式会社の奥山様が守りたかったのは、利用者様の笑顔と地域の介護サービスの永続でした。そのバトンを受け継いだ株式会社快明堂の斉藤様。M&Aの成約式当日にお伺いし、両者にお話を聞かせていただきました。

築いてきた介護サービスを
地域に提供し続けたい
天仁の代表取締役である奥山様がM&Aによる事業承継をお考えになった理由をお聞かせいただけますか
奥山氏:きっかけは1年ほど前、私の右腕として弊社をまとめてくれていた職員の退職でした。家族の都合で仕方がなかったのですが、私としてはその職員への事業承継を考えていたため、計画変更を余儀なくされることに。今後の見通しについて取引銀行に相談をしたところ、「事業承継の方法としてM&Aも選択肢としてあり」だと賛同いただいたことで私も気持ちの切り替えができ、そこからM&Aを前向きに検討し始めました。情報収集をしたり複数社から話を聞いたりして半年ほど経った昨年の9月に、名南M&Aとアドバイザリー契約を結びました。
取引銀行を通じて名南M&Aを知ったということですが、選んだポイントはどんなところだったのでしょうか。
奥山氏:取引銀行の担当者も、名南M&Aのアドバイザーも、本当に親身になってサポートをしてくれました。本日成約式を無事に迎えられたのも、彼らが私の課題に寄り添い、適切なタイミングで的確なアドバイスをしてくれたおかげだと思っています。名南M&Aのアドバイザーはとても頼りになる存在で、目的達成に向かって伴走してくれる感覚でした。玉石混交な情報の取捨選択時の確認先は、常に名南M&A一択。それくらい頼らせてもらいました。
成約式を終えた、今の気持ちをお聞かせいただけますか。
奥山氏:これまで大切に育んできた2つの通所介護事業所を快明堂の斉藤社長に引き継いでいただき、地域に残すことができました。「ホッとしている」のが正直な心境です。事業所の利用者の方々にも引き続き介護サービスを受けていただけることになりました。ようやく肩の荷を降ろして次のステップへ踏み出せる、そんな気分です。
事業拡大のため、
戦略的にM&Aを推進
続きまして、譲受企業である快明堂の代表取締役 斉藤様にお聞きします。
斉藤社長は事業拡大のためにM&Aを戦略的に進めていらっしゃいますが、今回の天仁の譲受は、どんな点に可能性を見出されたのでしょうか。
斉藤氏:弊グループはこれまでにもM&Aを複数回行い、静岡県内で20か所以上のグループホームやデイサービスを運営しています。今回のM&Aは、天仁の本社が同じ静岡県内にあり、同じ介護事業で人の交流もしやすく、奥山社長の築かれてきた事業所をさらに良くできる、また、やひろホールディングスのグループ全体で考えた時には、シナジー効果が見込めると考え、最終的には、天仁の奥山社長のお人柄を含めて譲受を決めました。奥山社長の想いを受け継いだからには、地域のために事業所を永続させていきます。
名南M&Aとは取引銀行経由での出会いだったと伺っていますが、名南アドバイザーの対応はいかがでしたか?
斉藤氏:巷のM&A仲介会社からは、毎日のようにDMや連絡が来ますし、その内容にも不信感を抱いていましたので、取引銀行に「信頼のおけるM&A仲介会社を紹介して欲しい」とお願いして紹介いただいたのが、今目の前にいる名南M&Aのアドバイザーです。彼が「弊社は、営業会社ではなくコンサルティング会社です。提携する金融機関や会計事務所の皆様からの信頼をもとに質の高いサービス提供に注力しておりますので、無作為なダイレクト営業に労力をかけることはしておりません。」と言った時に、名南グループは経営美学のある組織だな、と思いました。彼はレスポンスが速く、回答も的を射ているので、私も気持ちよく物事を進めることができました。
名南M&Aのアドバイザーにお伺いします。レスポンスの速さ、というお話が斉藤社長からありましたが、それは意識しているのでしょうか。
アドバイザー:弊社の企業文化に「爆速」というものがありますので、スピード感は常に意識をしております。加えて、「プロ意識」を持つことにより、質の高いサービス提供をさせていただくことを心がけております。
情報も気持ちも開示して、
手を携えて共に未来へ
成約式での奥山社長の言葉が心に残っています。
天仁への想いを改めてご紹介いただけますか。
奥山氏:介護で苦労する人を少しでも減らしたいと立ち上げた通所介護事業所ですが、利用者様の笑顔、楽しそうな声を聞けて本当に良かったと思いましたし、社会貢献できたことも得難い経験となりました。この事業を未来につなげるためにご縁をいただいた快明堂さんは、現場に足を運んでくださり、利用者様の声に耳を傾け、私たちの想いを引き継ぐ、という決断をしてくださいました。今後は新たな経営環境で職員が活躍し、利用者様にも質の高いサービスが提供されることを期待しています。私自身も、これからは地域の一員として関わり続けていきます。
最後に、M&Aをご検討中の方へのアドバイスやメッセージを、譲渡側、譲受側の双方からいただけますでしょうか。
奥山氏:譲渡する立場からお伝えしますと、事業承継について一人で抱え込んでしまい、M&Aの相談に踏み切れない方が多いのではないかと推察します。例えば決算数字を把握している取引銀行が状況を汲み取って声をかけてくれるとか、経営者が本音を言いやすい環境があるといいんじゃないか、と今回の経験を通して思いました。
斉藤氏:譲り受ける立場からのアドバイスとして、私は相手先の企業に経営の「軸」があるかを見るようにしています。奥山社長は、「地域に介護支援のための場所を残す」という意思を貫いてブレることがありませんでしたから、私もその想いを引き継ぐ覚悟ができました。ただ、私はM&Aに関しては「何がなんでも取りに行く」ということはしません。お話を聞いて、縁がつながれば、という流れを大切にしています。スポーツでも仕事でも人生でも、「軸」がないとうまくいきませんよね。奥山社長はひとりで本当によくここまで築いてこられたと思います。会社経営はエネルギーが必要です。弊グループはある程度組織が出来上がりましたので、共に未来をめざす仲間がいます。昔は私も一人でやっていましたから、奥山社長の苦労はよくわかります。
奥山氏:言うは易しですが、実際に体現されてらっしゃる斉藤社長は素晴らしいと思います。
斉藤氏:介護報酬はこれからも下がっていくだろうし、介護業界の今後の見通しは決して明るくはないでしょう。だからこそ、私は会社規模を大きくしてシナジー効果を出せるよう組織化する必要があると考えていますが、まだ道半ばです。奥山社長の想いを受け取り、弊社がそれを未来へつないでいく。やひろグループの発展が奥山社長の守ってこられた事業所のためにもなっていくと思うので、これからも会社規模を拡大していきたいと考えています。
言葉を選びながら大切に紡ぎ出す奥山社長のメッセージと、エネルギー溢れる斉藤社長の熱いメッセージが重なり連なって、未来へと進んでいく。そんな印象を受けたインタビュー現場でした。